基本となる6つの音     ■パターン表の見方     練習のポイント     ■代表的なトーキの練習

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1. エクササイズ

2. アンゴラ
3. サン・ベント・ピケーノ
4. サン・ベント・グランジ
5. ジョーゴ・ジ・デントロ
6. ヘジオナウ
7. イウナ
8. カヴァラリア
9. アパニャ・ラランジャ・ノ・シャゥン・チコチコ
10. サンバ・ジ・アンゴラ



 トーキの練習に入る前に、基本的な音をきれいに出すためのエクササイズをしましょう。ビリンバウの音は非常にシンプルなだけに、一つ一つの音をいかにクリアーに出し分けるかが重要なポイントになってきます。ここでは上で紹介した
6つの音をまんべんなく練習できるようなパターンを9つだけ絞り込んで収録しました。


 また記号では表していませんが、以下のパターンを練習する際は、折にふれてワウワウ効果(カバッサをお腹に付けたり離したりする動作)を取り入れながら行うように心がけましょう。ビリンバウをマスターするにあたって、左手の動きは非常に重要です。






 ビリンバウをぐらつかずに持てるようになったら、まずはここからですね。各音を打った後、お腹からカバッサをすっと離すようにして見てください。音にぐっと伸びが感じられると思います。






 後半3回続くところで、ドブラゥンがずれないようにしっかりアラーミに押し当てるようにしてください。






 このパターンでもやっかいなのは「△△△△」のほうだと思います。特に意識的に練習しましょう。






 音符でいう三連符というやつで、非常によく登場します。上のEX-3と区別して理解してください。アンゴラのシャマーダのリズムとしても使われています。









 このパターンは下に見るEX-6とセットで非常に重要です。「●」と「××」をきれいにセパレートできるように繰り返し練習しましょう。

 EX-5bの方は、少し高級なテクニックです。最初の「×」を「−」に替えることで、バケッタの動きは下上とすばやく動きます。初心者の方は、とりあえず5aの方を完璧に仕上げてください。






 EX-5で行った同じことを、今度は「▲」と「××」の間で行います。余裕があれば「−×」のヴァージョンにもチャレンジしてみてください。






 EX-5EX-6を交互にしたパターンです。きわめて重要なパターンなので、常に練習するよう心がけてください。慣れてきたら少しずつスピードを上げていきましょう。






 この音はヴァリエーションにざまざまなスパイスを効かせるのにとても役だちます。イウナの演奏にも避けて通れませんね。






 EX-8の「●*」の後に「×」を続けます。このときに単なる「●×」dom  ts)と区別するため、「*」と「×」の時間差を意識してください。

 メストリ・カンジキーニャが作ったとされるトーキ「サマンゴ」のベースを構成するパターンでもあります。

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 ほとんどのカポエイリスタがこのトーキの練習から始めます。カポエイラ・アンゴラを「母なるカポエイラ(capoeira mae)」と呼んだメストリがいますが、トーキの方もサン・ベント・ピケーノ、サン・ベント・グランジとならぶカポエイラを代表するリズムです。シンプルですが、それゆえに奥の深〜いトーキです。









 上で少し触れましたが、一般に「トン・チーン」と表現されるアンゴラのベースですが、実際には多くのメストリたちは「トイ・チーン」とbのように弾いています。というわけで以下に示すヴァリエーションにおいては、bの方をベースとして採用しておきます。みなさんも音がある程度安定してきたら、こちらを普通に弾けるようにして下さい。

 まずはひたすらベースを繰り返し、安定感を養いましょう。速くなったり遅くなったり不整脈にならないように。一番いい方法はカポエイラ・アンゴラのCD何度も聞き込んで、リズムを体にしみこませることです。

 また0の「××」の部分も「−×」にすると、よりすっきりしますよ。本書のパターン表では「××」にしてありますが、私自身は普段「−×」と弾いています。






 「トン・トン・チン・ツツ、トイ・チーン・ツツ」と読みます。

 1小節目がヴァリエーション、2節目がベースという構成で、これを繰り返して練習します。以下に紹介するパターンはすべてこの形式になっています。





 
 「トン・トン・トン・ツツ、トイ・チーン・ツツ」と読みます。






 「トン・トト・トン・ツツ、トイ・チーン・ツツ」と読みます。






 「トン・チト・チン・ツツ、トイ・チーン・ツツ」と読みます。そろそろ読み方も慣れてきましたよね。






 「トン・ツト・チ・トイ・ツ、トイ・チーン・ツツ」と読みます。もう大丈夫ですね。

 これも非常によく使われるパターンです。「×」のところは「△」にしてもいいですが、そうすると少しのっぺりした感じになります。こちらの方が変化に富んで、締まった感じがすると思います。






 独特のアクセントがついて、多用されるパターンのひとつです。2つ目の「▲」をしっかり打ちましょう。これがぶれると台無しです。






 A-6の「▲」を「●」にしたパターンです。









 これも定番中の定番です。A-8bA-8aの「」を「●*」にしただけですが、ボリューム感がぐっと増します。






 A-8aのヴァリエーションです。2つ目の「●」を「○○」に分けただけですね。









 エクササイズでも見た三連符の登場です。「ト・ト・ト、ト・ト・ト、トイ・チーン」という感じですね。A-10bのほうは、「*」がくっつく分、より素早いバケッタさばきが要求されます。慣れるまではA-10aとワウワウ効果で十分ですよ。










 複雑なように見えますが、後半は実質的にA-10ですから、別に怖くありませんね。「トン・トン」のあとに「チ・ト・トン」が3回続いているだけです。










 これも後半はA-10で、新しいのは前半だけです。「トン・ツ・ト」+「チ・トンイ・ト」を3回と考えてみてください。「トンイ・ト」の部分をクリアに出すのが、きれいに聞かせるポイントです。

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 ちょうどアンゴラを裏返した形で、上から下へ「チン・トーン」と弾きます。音のいいビリンバウで弾くと、「トーン」の部分の伸びが非常に気持ちいいですね。メストリ・ジョアン・グランジやメストリ・ボカ・ヒーカなど、アンゴラより好んでこちらを弾くメストリも少なくありません。






 「●」の余韻を十分に伸ばしてください。途中でドブラゥンをアラーミに触れてしまうと、音もそこで途切れてしまいます。「××」を打つ瞬間までカバッサはお腹からしっかり離しておきましょう。






 ベース+「●●」ですね。シンプルですが、確実に。






 お気づきになられたかもしれませんが、ヴァリエーションの多くもまたアンゴラの反転になっています。つまり「トン・チト・チン」が「チン・トチ・トン」という具合です。1つのトーキをしっかり弾けるようになれば、おのずと他のものも弾けるようになってくるんですね。






 P-2の発展形です。






 「チン」の連続は特に丁寧に、ぶれないように






 エクササイズでも紹介しましたが、このパターンは非常に重要です。次にみるサン・ベント・グランジのヴァリエーションとしてもまた超大事!ですので、特に心がけて練習しましょう。






 一見地味なようですが、デリケートなテクニックが要求されます。このパターンは、さまざまなヴァリエーションの最後にトッピングして、変化を作るのに便利です。たとえばP-8の最後の部分もこのパターンで締めくくっていますね。これを参考にしてほかのヴァリエーションでも試して見てください。









 ここでも3連符の登場です。最初の1打だけ「」になっていますが、あとはアンゴラの場合と同じです。










 これは慣れるまでは少し収まりが悪いように思えるかもしれませんが、A-11のサン・ベント・ピケーノ版ですね。実際にはきちんとリズム内に収まっていますので。誰かに隣でベースを弾いてもらいながら、きちんとそこへ戻って来られるように練習しましょう。

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 カポエイラを知らないブラジル人でも、ビリンバウと聞けば「シィキ・ジン・ドン・ドン」とおどけるくらい、ビリンバウのリズムとして浸透している代表的なトーキです。ヘジオナウのサン・ベント・グランジと区別するためにサン・ベント・グランジ・ジ・アンゴラと呼ばれることもあります。






 見てお分かりの通り、サン・ベント・グランジのベースは、サン・ベント・ピケーノのベースに、もうひとつ「トン」を追加しただけです。すなわち▲●+●ですね。3本のビリンバウで演奏するときにこのことを頭に置いておくと、非常にまとまりのある弾き方ができます。アンゴラやサン・ベント・ピケーノの余韻のところ、すなわち「3」で、サン・ベント・グランジの2つ目の「●」が浮かび上がってきますね。


 基本的なヴァリエーションは、サン・ベント・ピケーノのP-2からP-8までを、ベースをサン・ベント・グランジにして練習してください。ここではヴィオラを弾くことを想定して、グンガ、メジオを引き立てるような、より連続性のあるパターンを紹介しましょう。













 「××」を「×○」にするだけで、まるで頭とお尻がくっついてエンドレスになったような連続性のあるパターンになります。これらをずーっと弾いているだけで、ヴィオラのパートがそれなりにこなせてしまいます!










 このパターンもエンドレス的な連続性のあるタイプで、定番中の定番です。ここではサンプルとして4小節で切ってありますが、「××」を「* ○」にすることで、ずっと続けられます。












 G-2の亜種を3パターン。ぱっと聞くと複雑そうに思えるかもしれませんが、書いてみればこんなものです。






 特にスピードの速いサン・ベント・グランジのときに美しさが際立つパターンです。最後の「××」のところを「△○」にして、4小節くらい連続で弾いてもいいですね。










 「▲」の音ばかりが続くので、ドブラゥンがずれないようにしっかり押さえつけておきましょう。このあとにG-4を続けるのもよく合いますね。









 ここでもう一度サン・ベント・グランジは、サン・ベント・ピケーノ(▲●)+ ●だということを思い出してください。一番いいのは、誰かにアンゴラかサン・ベント・ピケーノを弾いてもらい、その横であなたがこのパターンを重ねてみます。すると「3 0」の部分が浮かび上がって聞こえますよね。この感覚を理解したうえで弾くと、聞かされる方も非常に安心して聞けます。


 また重複を避けるために載せませんが、次にみるジョーゴ・ジ・デントロのJD-2JD-3は、サン・ベント・グランジのヴァリエーションとしても非常にポピュラーで、かつ美しいパターンです。必須科目ですので、あわせて練習してください。

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 ジョーゴ・ジ・デントロとはカポエイラのゲームの種類で、相手の攻撃の中へ入り込みながら防御、反撃を繰り出すというタイプのジョーゴです。相手との距離が近い状況で常に適切なポジショニングや立ち回りが要求されるという意味で、最もカポエイラらしいジョーゴであるとも言えます。


 ここで紹介するのはメストリ・カンジキーニャが弾いていて、メストリ・ブラジリアが継承し、われわれカポエイラ・ヴァジアソンが受け継いでいるジョーゴ・ジ・デントロです。これとは別のリズムで同名のジョーゴ・ジ・デントロというトーキもあります。






 これがジョーゴ・ジ・デントロのベースにあたります。カポエイラ・ヴァジアソンのホーダで、3本のビリンバウを用いる場合、グンガがこのパートを演奏します。






 このパターンでは「●*×」を2回入れていますが、これを1回にしてもいいです。












 JD-2aは、ベースJD-1の「●▲」の部分が「▲●」と裏返っています。JD-2bJD-2cはそのヴァリエーションです。

 メジオは、このパターンを弾いてもいいですし、「●」の音の高さによっては、メジオもJD-1をベースにした方がすっきり聞こえることもあります。









 これはヴィオラのパートを想定しています。カポエイリスタの間でgeとして知られているトーキとほとんど同じリズムです。

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 それまでの伝統的なカポエイラの格闘技的な有効性を高めるとしてメストリ・ビンバによって創出されたカポエイラ・ヘジオナウには8つの公式トーキがありますが、その中で最も代表的なトーキです。そのためヘジオナウ以外のカポエイリスタたちからは単に「ヘジオナウ」と呼ばれたりしますが、カポエイラ・ヘジオナウの中での正式名称はサン・ベント・グランジといいます。先に見たアンゴラのサン・ベント・グランジと区別するためにサン・ベント・グランジ・ジ・ヘジオナウと呼ばれることもあります。






 「* ×」の部分は「× ×」と簡略化されて叩かれることが多いですが、ビンバ自身が演奏しているオリジナル・ヴァージョンに忠実であろうとする人たちは、意識的に「* ×」のデリケートさを大切にしています。これはサン・ベント・グランジに限らず、ヘジオナウのすべてのトーキに共通の特徴です。






 カバッサをお腹に付けたり離したりするワウワウ効果を使って、インパクトを強めましょう。






 「●*」の音のキレを追求してください。












 三連符のパターンですが、ここではカバッサをお腹に付けたところからスタートさせて、少しずつ開いていきます。薄い色から濃い色に移行するグラデーションのようなイメージです。












 「●」と「▲」が交互に混じったパターンです。






 RG-62回繰り返す感じですね。このRG-7の「*×」を「○△」にして、そのあとにRG-6を続けるパターンも非常に一般的です。

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 イウナとは、ブラジルの鳥の種類の名称で、ギターのトーキにもその鳴き声をまねたものがあるようです。メストリ・ビンバによって考案されたとされるこのトーキは、イウナのビリンバウ・ヴァージョンですね。


 カポエイラ・ヘジオナウでは、所定のコースをすべて終了した修了生(フォルマード)とメストリだけが、このリズムでジョーゴをしてもよいとされていました。普通の生徒には許されていなかった特別のトーキなのです。






 メストリ・ビンバが創出したオリジナルのイウナには、「▲」の音が登場しません。すべてのニュアンスを「●」の音の叩き方とカバッサの開閉で表現します。






 メストリ・ビンバの息子メストリ・ネネウは、IU-1を雄(macho)、次のIU-2を雌(fêmia)の鳴き声だと説明します。同じ叩き方でもカバッサの開け閉めによって、音色にさまざまな変化をつけることができます。






IU-1IU-2のつなぎ的な役割のパターンです。これだけを単独でリピートすることもあります。

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 カヴァラリアとは騎兵隊のことを意味していて、その昔カポエイラが法律で禁じられていた時代、取締りの警察の接近を仲間に知らせるトーキとして用いられたと言われています。そのためカヴァラリアは警告のトーキ(toque de aviso)とも呼ばれ、これが弾かれるとカポエイリスタたちは散りぢりになって逃げたのでした。


 カヴァラリアは、メストリによってまったく異なるリズムを弾いたりする非常に多様性に満ちたトーキですが、ここではメストリ・ビンバのカヴァラリアを紹介します。






このトーキはビリンバウの基本的な音を練習するサンプルとしても非常に弾きやすく、初心者の方におすすめです。初心者の方はこのベースを何度も繰り返し練習しましょう。最初は「* ×」を「× ×」にして練習してもいいでしょう。






 ベースとCV-2を半分ずつ足しただけですね。






 以下、ヘジオナウのサン・ベント・グランジのヴァリエーションとほとんど同じなので、特にコメントも必要ないですね。






















 三連符+「●」か「●●」か「●●●」かで区別しています。

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 このトーキ名は「地面のオレンジをついばめ、チコチコよ」という意味で、チコチコとは鳥の種類の名前です。このトーキ専用の歌詞も決まっていて、「apanha laranja no chão tico-tico, se meu amor fosse embora eu não fico 」というフレーズを繰り返します。


 通常のアンゴラのヴァリエーションとして弾かれるほか、ホーダに投げ込まれたお金を口で拾うジョーゴ・ジ・ジニェイロ(jogo de dinheiro:お金のジョーゴ)をするときに弾かれたりします。


 このトーキをサンタ・マリア(Santa Maria)と呼ぶ人もいますが、カポエイラ・ヘジオナウのサンタ・マリアとはまったくの別物です。むしろリズム的に似ているのはイノ・ダ・カポエイラ・ヘジオナウ(Hino da Capoeira Regional)ですが、厳密にはやはり異なるベースで構成されています。










 4小節分これ全体がひとつのベースで、これをひたすら繰り返します。多少のヴァリエーションはありますが、それほど複雑なものはないので、このベースをマスターすれば十分対応できますよ。











 ひとつだけもっともポピュラーなヴァリエーションを紹介しておきます。

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